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熟眠障害

熟眠障害 (セラピスト 2018年8月)

(セラピスト 2018年8月)

患者さん本人が気づいていない無意識のストレスをじっくり解決

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はつらつ元気 2018年8月掲載


 睡眠時間は十分取れているのに、寝た気がしない、日中ウトウトしたりだるいというタイプの睡眠障害もあります。

この症状の原因として、整体師の鈴木直人さんは、無意識化におけるストレスと自律神経の乱れを指摘しています。

取材・文 山村浩子


熟眠障害は無意識のストレスが原因なことも

 睡眠時間はしっかりとっているのに、熟睡した感じがせず、すっきり起きられない、昼間に眠くなったり、集中力がない......といった症状。
この熟眠障害にはどんな原因が考えられるのでしょうか?


 「実はこれにもストレスが関係していることがあります」と、うつや自律神経の整体を専門にしている健療院グループの鈴木直人さん。


 入眠するときは意識があり、最近抱えている問題や受けたストレスをクヨクヨ考えて、それが原因で寝付けないことがあります。
でも、いったん眠りに入ったら意識がなくなるのに、どうストレスが関係するのでしょうか。


 「関係するのは、自覚していない無意識のストレスです。
人はイヤなことがあっても、それを忘れようとします。
しかし場合によっては、それは完全に忘れているのではなく、身体が無意識のストレスとして覚えていることがあります」


 たとえば、家事や育児などで、自分がやりたいことを抑えて、家族のためだけに生きている人がいるとします。
それが幸せだと思い込んでいるので、「自分が本当にやりたいことができていない」ことに、ストレスを感じていません。
しかし、その乱されない欲求が積み重なって、無意識のストレスになっていることがあるのです。


 「その無意識のストレスが、深い睡眠に入る途中で現れるのです。
すると交感神経にスイッチが入り、身体が緊張状態になり眠りを妨げ、それ以上深く眠ることができなくなってしまいます。
結果、浅い眠りになってしまうのです」


 大きなストレスに合ったとき、野生動物なら「逃げるか? 戦うか?」の選択をします。
しかし、人間はそのどちらも選択できない環境が多く、感情を抑え込んでしまいます。


 「感情をコントロールすることは、多かれ少なかれ、誰でも行うことです。
でも、その程度が人それぞれに違うし、性格も環境も千差万別なので、必ず無意識のストレスで熟眠障害になるわけではありません。
一つの傾向としては、社会性の高い人や、いい人と言われる人ほど、その場をうまく切り抜けようとして自己主張せず、過度に感情を抑えてしまいがちです。
そういうタイプほど、無意識のストレスをためて、熟眠障害に陥りやすいようです」


 実際に熟眠障害を始めとする不眠に悩んで、治療院に駆け込んで来る人が少なくないそうです。


交感神経型と副交感神経型の違いを把握する!

 セラピストがこうした無意識のストレスにアプローチするためには、自律神経に働きかける施術を行います。
そのためには、どんなタイプのストレスなのかを見極める必要があります。


 「わかりやすい例で言うと、女性は周りに気を使い、同調する能力が高い傾向がありますね。
いわば、戦う交感神経を抑圧している副交感神経型です。
反対に男性は子どものころから、弱音を吐くな、メソメソするなと言われる。
要は悲しみの感情、副交感神経を抑圧しがちな交感神経型です」


 女性、男性と表現したのは、あくまでわかりやすい例として挙げているだけで、性別は関係ありません。


 「副交感神経型と交感神経型、大きく分けたこの二つのタイプには、それぞれに違うアプローチが必要です」


 副交感神経型は知らず知らずのうちに気を遣って、無意識のうちに筋肉を緊張させます。
まず、それに気付かせて、力を抜く練習をします。
その方法がこちら
手や首の力を抜くように指導します。


 しかし大概の人は無意識のうちに、気を遣って施術者に合わせようとしたり、もしくは「手を離されてしまうのでは?」と信用できずに、力を入れてしまいます。
しかし、これを何度か繰り返すうちに、だんだん力が抜けてきます。


 一方、交感神経型は副交感神経がうまく働かないので、これを活性化する施術を行います。
その方法がこちら


 まず、クラニオセイクラルセラピー(頭蓋骨調整法)で頭部にアプローチします。
頭蓋骨は22個の骨が立体パズルのようになって形成されていて、その縫合部分は呼吸とともに微妙に動いています。


 しかしながら、交感神経過多の状態が続くと、頭の筋肉が緊張して頭蓋骨が動かなくなってしまうのです。
この微妙な動きとリズムを正常にすることで自律神経を整えていきます。


 続いて、副交感神経が支配する、腹部を軽く刺激して、副交感神経が働くように促します。


 「無意識のストレスを解決するのは、とても時間がかかります。
自分で急いで解決しようとすると、意識できる表面的なストレスを見てしまいます」


 前出の例で見てみると......夫や子どもの世話をすることに幸せを感じていて、「本当はこれがやりたかった......」ということに、自分でも気づいていないわけです。
そこで解決を急いでしまうと、満たされない気持ちについて、「夫がねぎらってくれない」「子どもが自律してしまった」といった、意識できるストレスが原因だと思ってしまうのです。


 「患者さん本人も気づかない、深い問題点を探る必要があるので、専門知識のあるセラピストと二人三脚で、気長に取り組む必要があります」


無意識のストレスと睡眠の深さ

 自分でも気づいていない無意識のストレスを身体が覚えていて、深い睡眠に入る途中で現れることがあります。
ここでストレスを思い出した身体が筋肉を緊張させるため、それ以上、深い眠りに入れず、浅い睡眠に戻ってきてしまうのです。
これにより、全体的に眠りが浅くなり、疲れがとれないといった症状が現れます。


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熟眠障害と頭蓋骨の関係

 額の下には、意欲や情動に基づく記憶などを司る前頭葉があります。
交感神経過多の状態が続くと、この前頭葉の動きが悪くなります。


 頭蓋骨は22個の骨から形成されていて、動かないようですが、実は微妙に動いています。
仕事などで、日々「戦い」の交換神経が過多になっている人などは、副交感神経の働きが悪く、通常動くはずの頭蓋骨が動かなくなっていることがあります。
これが熟眠障害の原因になっていることも。
クラニオセイクラル療法の優しいタッチで、この動きとリズムを正常に導き、交感神経の働きを促すアプローチをします。


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副交感神経はまず上半身と頭の緊張をゆるめる

1、

 施術者は患者さんの腕を持ち、完全に力を抜くように促す。
その腕を上げたり、下げたりすると、大概の人は完全に脱力することができず、力が入ってしまう。
それに気付かせる。

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2、

 腕を揺らしてみる。
こうして脱力する練習をしていく。

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3、

 腕を肩より上に上げてみたり、腕を曲げてみたりする。
脱力の練習をすると、個人差があるが、だんだん腕の力が抜けていく。
強い無意識のストレスがある人は、なかなか力が抜けない傾向がある。

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4、

 次に、頭を様々な方向に動かしてみる。
まずは首の屈曲。
このときも完全に力を抜くように促す。

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5、

 回旋、側屈などと続ける。

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6、

 首を水平方向に左右にスライドさせたり、八の字に動かす。
ストレスが多いと、首の動きが悪くなるので、その確認をして、緊張のリリースを行う。

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交感神経は頭蓋骨と内臓調整で副交感神経を活性化

1、

 クラニオセイクラル療法の前頭骨リフトを行う。
前頭骨に両手の三指を当て、斜め45度の方向に引き上げる。
5gタッチと言われる、ごくごく軽いタッチで行う。

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2、

 続いて蝶形骨リフトを行う。
人差し指を蝶形骨に当て、斜め45度に引き上げる。
患者さんの顔にシワが寄るようでは強すぎる。
軽いタッチが必須。

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3、

 両手の四指を重ね、剣状突起の部分(みぞおち)に軽く当てる。
副交感神経が支配する胃の緊張をやわらげることで、副交感神経の働きを促す。

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4、

 軽く身体の上部に向かって押し、続いて指をひっかけるようにして、下にひく......という微妙な動きをして、軽く圧をかける。

*



5、

 へその下。
恥骨の上部分に手の平を置き、手の中央部分を支点にして、指先を左右に旋回させる。
手が行きにくい方向がないか確認。

*



6、

 行きにくい方向は「ひきつれ」があるので、その方向に左右の四指を重ねて、軽く圧をかける。
2~3回繰り返し行う。

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